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 「拈華微笑」を拝読する                 平成26年 9月 2日

 秋田佳津先生の「拈華微笑」を拝読する。文章は簡潔、一文一文が短くてとても読みやすい。
簡潔であるが、本書で使用される言葉や内容から先生の文学や芸術に対する素養の高さが感じとれる。その方面の知識に疎い私のような人間にとって勉強になる。文学や芸術、宗教に関する記述は多岐にわたるが、視覚的な美に対する表現が多く、先生の表現のうまさも手伝い、自分も実際に見てみたいという気にさせられた。そうした、美しいもの、深遠なものに対する記述の合間合間に、お金や社会に関するえらく現実的な記述も出てくる。
本書には月に関する記述が多い。かぐや姫が月に還る「竹取物語」、自らの身を炎の中に投げ出した「月と兎」の説話。こういった連想と現実的な話があわさり、月の美しさを称えた記述は、実は先生の厭世観の示唆ではないかとドキッとさせられた。しかし、非現実的なものと現実的なものの両方を想う心はとても人間的であり、このバランス感覚こそ、多くの人との交流を可能にし、良い縁を生みだしていく秘訣なのかもしれないと思った。
本書を読み、私も多くのものに目を向け、深いものに気がつくことのできる感性と、目を背けたくなる現実も受け入れることのできる人間になりたいと思いました。

 

赤 池 佳 史


   
         


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